皆さんは、2018年6月にタイ・チェンライの洞窟に地元サッカーチームの少年12人とコーチが豪雨による急な増水で洞窟の奥深くに閉じ込められてしまったニュースを覚えていますでしょうか?
今回は、「救助は100%不可能」と言われながらも、事故発生から18日目に少年たちは全員奇跡的に生還(救助ダイバーは1名死亡)した出来事を実写映画化した『The Cave~サッカー少年救出までの18日間』を解説していきます。
『The Cave』作品情報
『The Cave』あらすじ
2018年6月23日、地元の少年サッカーチーム「ムーパ・アカデミー」の12人とコーチは、タムルアン洞窟内に侵入した。
当時タイは雨期で、7月〜11月は洞窟の一部が浸水する為、入口には立ち入り禁止の標識がされていたが、洞窟は鍾乳洞になっており、幻想的な光景に海外からやってくるマニアの間では人気スポット。
少年たちは、よく肝試しで洞窟の奥まで入っており、この日はチームのメンバーの誕生日ということもあり、中で誕生日ソングを歌う為に洞窟内に侵入するが、予期せぬ水の流入で戻れなくなる。
その頃、ヘッドコーチの電話には子供がまだ帰宅していないという親からの不在着信が約20件残されており、同チーム内の少年達に連絡した結果、洞窟へ探検しに行った少年グループがいる事が判明。
すぐさま洞窟に行くと、入口近くには捨てられた自転車複数とバッグ複数があり、ぬかるみの通路からは水がしみ出していた。
バッグを確認すると、少年チームの物と判明し、すぐさま捜索願を出す。
洞窟内の数か所は完全に水没している上、穴の大きさも人一人がやっと通れる程度・・・
生存は絶望的とみられたが、世界中から集まったケイブ・ダイバーによる少年たちの決死の救出劇が始まった。
『The Cave』みどころは?
まずは、実際に起きた話ですので、もとになった出来事をある程度理解していれば、より真相がわかっていきますので、より楽しめるかと思います。
作中のネタバレは控えますが、副題が『 サッカー少年救出までの18日間 』とある通り、助かるのは大前提です。
しかし、救出に参加した元タイ海軍SEALのダイバーの1名は残念ながら命を落とす事になります。
少年達がどうやって生き延び、救出側はどういう手段で救出し、亡くなったダイバーはどうやって亡くなったのか真相が明かされていきますので注目です。
実際に救出に参加したダイバーが本人役で登場
こちらの作品は、実際に救助にあたったダイバーやボランティアにあたった村人たちが出演しています。
誰が俳優で誰が本人なのか本当にわからないぐらい、素人の域を超えた演技力ですので、誰が本人役で出演しているかは作中で是非確認してみてください。
洞窟内のセットがリアル
本当にその場で起きているのではないかというぐらいかなりセットがリアルです。
これは、実際に救助に参加したダイバー達が本人役として登場しているからこそより細かい所を忠実に再現する事が出来たのかと思われます。
日本のJAXAとJICA(国際協力機関)が救出に貢献
「救助は100%不可能」と言われながらもなぜ救出出来たのか。
これには日本のJAXAとJICAが救出に貢献されたのですが、残念ながら本作品ではそのような描写がありませんでした。
ですので、補足としてご説明します。
少年たちを救出する穴を見つけるため、JAXAバンコク駐在員事務所前所長の辻政信さんは過去に衛星が撮影した、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の高解像度の地図画像に、等高線や洞窟のルート予想図を書き加え、救助用坑道や雨水流入口の探査等に活用できるようにタイ政府へ無償で提供しております。
JAXAのHPにも今回の活動についてご紹介されております。(タイ洞窟・救助活動に際しての衛星画像の提供について)
JICAに関しては、排水や土木の専門家など延べ7人を現地へ派遣し、タイ政府関係者に効率的な排水方法を助言するなど救出作戦を支援しました。
JICAのHPにも今回の活動についてご紹介されております。(タイ洞窟・救助活動に際してのJICAの取り組みについて)
もちろん日本人だけでなく、タイ警察、タイ海軍の精鋭タイ・シールズや米英豪などの軍隊、世界中から経験豊富なケイブ・ダイバー、7000人を超すボランティアスタッフの力が一つとなったことで、遭難した全員が無事救出されたのですが、日本の功績部分も少しフォーカスして欲しかったなというのが同じ日本人として思いました。
少年達が救出された功績が認められ、タイのラーマ10世国王から本活動に参加した全関係者に向けた感謝状が、そしてJICAタイ事務所の三宅繁輝次長と橋本豊企画調整員、元JICA専門家の降籏英樹さんの職員3人には勲章が授与されました。
『The Cave』後日譚
無事救出されたサッカー少年達等の後日譚は描かれておりませんので、ご紹介します。
少年らとコーチはタイの市民権を得る
市民権?どういう事?と思うかもしれませんが、遭難したアシスタントコーチと少年3人は無国籍だったのです。
それには理由があり、彼らは、タイ、ミャンマー、ラオス、中国を横切って延びる地域のゴールデン・トライアングルと呼ばれる部族出身であった為、国籍を持っていなかったのです。
この地域には明確な国境がなく、パスポートが割り当てられていないので、少年たちは国がない状態で外で試合をするのに苦労していたようです。
なので、救出後に彼らはタイの市民権をタイ政府から与えられる事になりました。
自己責任論はあった?
まず、洞窟は雨期は侵入禁止という地元の人ならわかっていたはずで、更に少年だけ洞窟に行ったならまだしもコーチがついていったので、コーチに対する責任は普通に考えるとあって当たり前なのかもしれません。
ですが、コーチの責任を問う声は少しはあがっているものの、絶望的だった13人の無事が確認されたこともあって自己責任を問う声はほとんどなかったようです。
日本であればかなり炎上していたかもしれませんが、とにかくよかったムード一色だったようです。
もちろん助かって良かったですが、それとこれとは話が別なような気はしますが、微笑みの国とも言われていますからお国柄なんでしょうかね。
少年達はイギリスの名門チームに招待され、試合を観戦する
救助された少年らは、サッカーが縁でイギリスの名門マンチェスター・ユナイテッドFCに招待され、同年10月にオールド・トラッフォードで行われた試合を観戦し、主力選手とも面会も果たす事になります。
また、救出作業で照明や誘導に使われた蓄光素材が福島県川内村の工場で生産された縁で、2019年4月に福島で中学生を中心としたJヴィレッジSCと交流試合を行ったそうなので日本のチームとも試合してるのならより日本も貢献していた事を伝えて欲しかったと思ってしまいます。
ネットフリックスでも映像化を発表
こちらの作品とはまた別で、アメリカの定額制動画配信サービスのNetflixもドラマ化する権利を獲得したとの事なので、ドラマだと映画よりもより詳細に描かれると思いますのでこちらも楽しみに待ちたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本でも結構大々的に報道されていましたので知っている方は多かったかもしれませんが、映画化されていたとい方はあまり知られていないのではないでしょうか?
作中は実話だからこそ過度に感動を訴えるような作品ではなく、むしろ現場をよりリアルに再現していますので、ノンフィクション作品ならではの内容となっております。
先日ご紹介したストックホルム症候群の語源となった『ストックホルム・ケース』も同様に言えるかもしれません。
以上最後まで見て頂き、ありがとうございました!
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